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 感染症の歴史と薬
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感染症とは、ウイルスや細菌が体内に侵入して増殖し、発熱・下痢・せきなどの症状がでる状態をいいます。スペイン風邪をはじめ、人類は、感染症と常に戦いながら、あるいはある意味でこれらの微生物と共存しながら生きてきました。

ひと昔前、日本では人々がおそれていた感染症として結核があります。結核死亡数は昭和18年約17万人に達し、その多くは20代前半の青年でした。有効な結核の薬が十分でなかった当時、結核の治療は外科手術が主流でした。私が大学で所属していた日本胸部外科学会は、結核外科の治療を主眼として昭和23年に発足しています。

昭和35年に発刊された遠藤周作の「海と毒薬」は、九州大学生体解剖事件を題材とした小説ですが、中にでてくる結核手術である胸郭成形術(肋骨切除により、結核でおかされた肺を虚脱させ排菌を停止させる手術)の場面では、「第一肋骨切除にともなう出血から、患者が手術中に死亡する場面」が生々しく描写されています。

その後、昭和18年のストレプトマイシンにはじまった抗結核薬の開発は、昭和23年パス、27年イソニアジド、29年ピラジナ、36年エタンブトール、そして昭和38年のリファンピシンに至り、結核の死亡率は急速に低下しました。この抗結核薬の普及により、結核の標準治療は外科医の手を離れて内科に移行しています。

現在、新型コロナウイルスに対して、結核のように有効な薬の開発が1日も早く待たれています。

 細菌に対する抗生物質は数多く臨床で用いられている一方で、ウイルスに対する薬の種類は圧倒的に少ないのが現状です。

これはウイルスが細胞内に寄生して、細胞側の機構を利用しながら増殖するため、ウイルスの増殖を抑えようとすると、細胞側の機能に影響してしまい、正常な細胞を壊してしまうためです。また、ウイルスに感染し、細胞内で増殖しはじめた時点では、自覚症状に乏しく、症状が出現して検査が陽性にでる時期になると、すでにウイルス量はピークを迎えており、ウイルスの増殖を抑制しても症状が緩和しにくく、またウイルスに対する過剰な免疫反応がおこると抗ウイルス薬だけでは対処が困難になるためです。

【以下日本の結核死亡数におけるグラフ(筆者作成)】

日本の結核死亡数の推移


2020年5月24日(日)

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