唾液PCR検査および新型コロナウイルスにおける検査について |
投稿: |
発熱外来において、従来は保健所あるいは医師会が行っているPCR検査を依頼していましたが、現在神奈川県における感染者の急増にともないPCR検査は、依頼してから5-7日間の待ち時間が生じています。当院では呼吸器や循環器疾患を有している方が大勢おられ、感染すると重症化する可能性のあるため、早期に診断することが必要となっています。そのため7月20日より院内で唾液PCR検査を施行しています。鼻の奥から綿棒で粘液を採取する従来のPCR検査は、検査後におきる「くしゃみ、咳」のため医療従事者がしぶきをあびることから、防御服、N95マスクなどの厳重な感染対策が必要であり、また検査後に生じるエアロゾルを予防するには、完全隔離された部屋、陰圧室、あるいは屋外での検査が必要なため診療所で施行するには高いハードルがありました。 6月2日 厚生労働省は新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査において、国立感染症研究所の「鼻の奥の粘液を使ったPCR検査で陽性となった感染者の85〜93%で、唾液でも陽性と判断された」との研究結果をもとに、発熱などの症状が出てから、9日目までは唾液を使うことを可能とする通知を出しました。 唾液検査では、飛沫やエアロゾルにともなう医療従事者や一般外来患者に対する感染リスクがなく、直接患者さん自身が専用容器に出した唾液を、サージカルマスク、手袋のみをした看護師が3重梱包して検査会社に提出するだけなので、診療所においても十分可能です。3週間おこなった発熱外来での検査では、幸いなことに現在まで陽性者はみられず、現在のところ相模原市において市中感染はそれほど蔓延している印象はありません。また7月17日には無症状者における唾液PCR検査も認められたことから、仕事等の理由から「陰性証明」が必要な方たちからのお問い合わせが増加しています。(無症状の場合はすべて自費検査) 新型コロナウイルス感染症においては、PCR検査、抗原検査、抗体検査の主に3つの検査があります。それぞれに特徴があり、現在の適応および特徴を表にまとめました(「コロナウイルス検査方法の比較」参照)。 唾液PCR検査は、検体を検査会社に提出した翌日の夜間に結果が送られてくるため、早くても結果判定までには2日を要しています。最も早いのは抗原検査における簡易キットでの検査です。これは、インフルエンザ検査で行われている検査とほぼ同じ方法であり、外来での簡易キットにより約30分程で結果がでますが、欠点として、@検査精度がPCR程よくない A唾液での検査は未だ認められていない(現在研究段階)ことがあげられます。そのため現時点では当院では採用していません。今後唾液による抗原検査簡易キットが発売されれば、外来で早期に診断が可能になるかもしれません。少し特殊ですが、SATIC法と言われるPCR法とは異なる核酸増幅法を用いた迅速検査法も開発がすすんでいます。これは唾液検体と試薬を混ぜて25分程度で検査結果が判定可能で、しかもPCRとほぼ同等の精度がある検査とされており、今後の推移に期待が持たれています。 検査を受ける方、または受けた方に最も注意していただきたいのは、どのPCR検査においても、その感度は約70%です。検査で陰性と判定されても、その後「陽性」と判定される可能性は常にある、ということはくれぐれもご承知おきください。 |
2020年8月16日(日) |
<< PCR検査について 2020.7.19 |
雑誌報道におけるPCR検査の目的について >> 2020.8.23 |
はじめのページに戻る |