風邪のお話 |
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風邪の原因と特徴 風邪の原因の80-90%はウイルスです 最も多いのがライノウイルスで30-40%、次がコロナウイルス(新型を除く)(10-15%)、その他RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、、アデノウイルス、エンテロウイルスなどがあります。 また冬に多く発生するインフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によるものですが、一般の風邪と異なり、感染力が強く、急激に発症して、高熱、全身倦怠感、関節痛・頭痛などの全身症状が強いのが特徴です。 夏かぜの原因ウイルスとして多いのは、アデノウイルス、エコーウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルスです。一般的に風邪のウイルスは低温で乾燥した環境を好みますが、夏かぜのウイルスは高温多湿の環境を好み、夏に活動が活発になる傾向があります。 アデノウイルスは咽頭痛・鼻汁・咳などの上気道炎症状のほか、中耳炎や下痢などの腸炎症状を呈することがあります。アデノウイルスは、インフルエンザウイルスと同じように「のどの痛み」を訴える前に「高熱」だけがみられる場合があります。また、通常、風邪による発熱は3日以上続くことはほとんどありませんが、アデノウイルスでは高熱が1週間近く続くことがあります。 特徴的なものとして、「プール熱」と呼ばれる咽頭結膜熱があり、38〜40度の高熱、咽頭痛、扁桃腺腫脹、結膜充血などがみられます。子供の間でプールを介して流行しますが、最近では温水プールの増加により1年を通じてみられています。プール以外でも飛沫や糞便を介して感染します。 流行性角結膜炎は、高熱はあまりみられませんが、充血、目やにが両目にみられ、強い感染力があります。 コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスなどはエンテロウイルス属に属するウイルスで、腸管内で増殖します。風邪症状のほか、下痢や嘔吐がみられ、「夏かぜはお腹にきやすい」と言われるのは、このためです。 コクサッキーウイルス感染によるヘルパンギーナは、口蓋垂(のどちんこ)の付近に水疱や潰瘍がみられる特徴的な所見を呈します。 手足口病は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる感染症で、てのひら、指、足底、口腔粘膜などに小水疱の発疹がみられます。5歳以下の乳幼児が90%をしめますが、時に成人でも流行することがあります。 春と秋に多いのはライノウイルス、冬に多いのはコロナウイルス(新型を除く)、RSウイルス、インフルエンザウイルスですが、最近は気候の変化、温暖化などにより風邪ウイルスの季節性がすこしずつずれてきています ライノウイルスは、鼻汁が多いため、ギリシャ語の「鼻」を意味するrhino(ライノ)に由来して名前がつけられています。鼻の粘膜からの感染をおこしやすく、高齢者では肺炎の原因にもなります。 RSウイルスは、生後数週間〜数ヶ月の乳幼児早期に感染すると細気管支炎や肺炎をおこしやすいとされています。生後1歳までに60%、2歳までに100%が罹患しますが、免疫がつかない(終生免疫ができない)ため、生涯感染をくりかえします。高齢者ではウイルス性肺炎の原因となります コロナウイルスは、風邪の原因ウイルスとして2番目に多いウイルスであり、従来は鼻汁、咽頭痛、咳などの一般的の風邪症状で終わっていました。 2019年12月に中国・湖北省武漢市で発生した原因不明の肺炎が、新型コロナウイルスであることがわかり、現在世界的に蔓延しています。 初期症状は一般の風邪と似ており、症状からだけで見分けることは難しい場合が多いですが、通常の風邪とやや異なる点は以下のようです。 @ インフルエンザの症状に似ており、筋肉痛・頭痛をともなう場合が多く 、鼻汁を訴える人が少ない A 特徴的な所見として、嗅覚または味覚(あるいは両者)障害を伴う頻度 が高い B 下痢や嘔吐などの消化器症状の頻度は10〜20%前後で、エンテロウイ ルスのような激しい症状は少ない 発症から1週間程度で回復する人が多いが、約15%の人で、呼吸状態が悪化し酸素投与が必要となります。 感染経路 ウイルスの感染経路としては、飛沫感染と接触感染があり、どのウイルスでも共通です。新型コロナウイルス感染症では、飛沫感染が主体で、接触感染もありうるとされています。密閉された空間において、空中を浮遊しているウイルスを吸い込むことによる「エアロゾル感染」の可能性も報告されていますが、まだ医学的には「エアロゾル感染」の定義はなく、現段階では医療機関において、エアロゾルが発生するような検査・処置(肺機能検査、気管支鏡、人工呼吸器の装着など)を施行する場合に対策を講じる必要があるとされています。「エアロゾル感染」は飛沫感染のひとつとも考えられますので、いずれにせよ一般の生活においても「こまめな換気」が必要です (最近 変異株において、このエアゾル感染が考えられる例も報告されています) 予防 現在、新型コロナウイルス感染に対して行われている以下の予防対策そのものが、一般の風邪の予防対策です。 @ 手洗い A 外出時のマスク着用 B 家の中でも咳エチケットを心がける C 換気を十分におこなう D 人と人との距離をとる(社会的距離) 実際、新型コロナウイルスが蔓延して、多くの人が予防対策をした、2020年から2021年にかえての冬には、インフルエンザはほとんど流行しませんでした。 対処法 夏かぜは下痢を起こすことも多く、下痢を起こすと脱水症状にもなりやすいので、水分を多めに摂ることが必要です。とくに高齢の方は、のどが乾いていることに気づきにくく、脱水症状になりやすいので、意識して定期的(1時間に1回程度)に水分補給を行います。おかゆや野菜スープなど胃腸にやさしく、ノドの通りの良いものを摂るようにします。 また、高熱が2〜3日続くこともよくありますが、厚着や、ふとんをかぶって寝たりすると、熱がこもってさらに脱水がすすんでしまいます。無理に汗をかいて治そうとする行為は逆効果です。 人間の体は、ウイルスが体に侵入した時、自分がもっている免疫により、発症を抑え、発症しても自然に治癒することができます。 一方で、炎天下での運動や外出、あるいは睡眠不足や不規則な食事は、免疫力の低下をおこします。 十分な睡眠、バランスのとれた食事、規則正しい生活がなにより重要です 免疫力を高める食べ物としては、ショウガやニンニクを使った料理や、チーズやヨーグルトなど乳製品に含まれるたんぱく質には、免疫を活性化する成分が多く含まれています。
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2021年7月1日(木) |
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