神奈川県相模原市の呼吸科・循環器科 しなだ呼吸器循環器クリニック 【呼吸器科・循環器科・内科】

しなだ呼吸器循環器クリニック

神奈川県相模原市緑区橋本3-14-1 橋本メディカルビル2階 TEL:042-700-3322

院長コラム


 現在の「発熱外来」
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オミクロン株の蔓延により現在、発熱診療をしている医療機関はどこも、特に外来がパンク状態にあります。当院でも、発熱外来用の専用回線に、朝の段階でお電話が集中するため、回線が一時的に途切れたり、つながらない状態になることがあります。当院は、発熱外来として導線を別にしており、専用の隔離室での検査をしております。できるだけ多くの方を検査したいとは思っておりますが、通常診療もあり、1人、発熱者を診察するごとに消毒を徹底している関係上、発熱外来で1日に検査できる人数が限られておりますことをご了承ください。また、発熱外来受診時の基準が、ホームページに記載していますとおり、かなり複雑でわかりにくくなっております。これは、できるだけ「検査が必要と思われる患者さんを優先的に検査する目的」から、お電話で看護師がトリアージ(患者さんの選択)しているためです。また、当院は神奈川県にありますが、地理的に都内(八王子や町田等)からの患者さんも多く、新型コロナウイルス感染症に対する対応が、神奈川県と東京都で異なっているため、さらに複雑な対応になっております。特に、抗ウイルス薬(のみ薬)の投与が必要な方の場合、院外薬局が神奈川県と東京都で別のため、大変恐縮ですが、東京都在中で、当院受診歴のない方は、都内の近隣医療機関での受診をお願いしています。
新型コロナウイルス感染症に対する国の方針は、日々変更があり、また国の方針と、神奈川県および自治体の方針には、タイムラグがあり、自治体ごとに対応が異なるため、私たちは日々その方針にふりまわわれているのが現状です。

2022年2月13日(日)

 職員におけるワクチン接種後の抗体保有率
投稿:
クリニック全員が新型コロナウイルスワクチン接種を終了し、先月スタッフ全員の抗体価を測定した結果をお知らせいたします
結果:スタッフ12名中12名全員が新型コロナウイルスに対する抗体を保有しました。交代価の平均値は18479 AU/ml、最低値は1370 AU/mlで、陰性は50AU/ml以下ですので、全員有効と考えられる抗体を保有した、と考えられます。

2021年7月11日(日)

 風邪のお話
投稿:

風邪の原因と特徴

風邪の原因の80-90%はウイルスです

最も多いのがライノウイルスで30-40%、次がコロナウイルス(新型を除く)10-15%)、その他RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、、アデノウイルス、エンテロウイルスなどがあります。

また冬に多く発生するインフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によるものですが、一般の風邪と異なり、感染力が強く、急激に発症して、高熱、全身倦怠感、関節痛・頭痛などの全身症状が強いのが特徴です。

 夏かぜの原因ウイルスとして多いのは、アデノウイルス、エコーウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルスです。一般的に風邪のウイルスは低温で乾燥した環境を好みますが、夏かぜのウイルスは高温多湿の環境を好み、夏に活動が活発になる傾向があります。

アデノウイルスは咽頭痛・鼻汁・咳などの上気道炎症状のほか、中耳炎や下痢などの腸炎症状を呈することがあります。アデノウイルスは、インフルエンザウイルスと同じように「のどの痛み」を訴える前に「高熱」だけがみられる場合があります。また、通常、風邪による発熱は3日以上続くことはほとんどありませんが、アデノウイルスでは高熱が1週間近く続くことがあります。

特徴的なものとして、「プール熱」と呼ばれる咽頭結膜熱があり、3840度の高熱、咽頭痛、扁桃腺腫脹、結膜充血などがみられます。子供の間でプールを介して流行しますが、最近では温水プールの増加により1年を通じてみられています。プール以外でも飛沫や糞便を介して感染します。

流行性角結膜炎は、高熱はあまりみられませんが、充血、目やにが両目にみられ、強い感染力があります。

 コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスなどはエンテロウイルス属に属するウイルスで、腸管内で増殖します。風邪症状のほか、下痢や嘔吐がみられ、「夏かぜはお腹にきやすい」と言われるのは、このためです。

コクサッキーウイルス感染によるヘルパンギーナは、口蓋垂(のどちんこ)の付近に水疱や潰瘍がみられる特徴的な所見を呈します。

手足口病は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる感染症で、てのひら、指、足底、口腔粘膜などに小水疱の発疹がみられます。5歳以下の乳幼児が90%をしめますが、時に成人でも流行することがあります。

春と秋に多いのはライノウイルス、冬に多いのはコロナウイルス(新型を除く)、RSウイルス、インフルエンザウイルスですが、最近は気候の変化、温暖化などにより風邪ウイルスの季節性がすこしずつずれてきています

ライノウイルスは、鼻汁が多いため、ギリシャ語の「鼻」を意味するrhino(ライノ)に由来して名前がつけられています。鼻の粘膜からの感染をおこしやすく、高齢者では肺炎の原因にもなります。

RSウイルスは、生後数週間〜数ヶ月の乳幼児早期に感染すると細気管支炎や肺炎をおこしやすいとされています。生後1歳までに60%、2歳までに100%が罹患しますが、免疫がつかない(終生免疫ができない)ため、生涯感染をくりかえします。高齢者ではウイルス性肺炎の原因となります

コロナウイルスは、風邪の原因ウイルスとして2番目に多いウイルスであり、従来は鼻汁、咽頭痛、咳などの一般的の風邪症状で終わっていました。

201912月に中国・湖北省武漢市で発生した原因不明の肺炎が、新型コロナウイルスであることがわかり、現在世界的に蔓延しています。

初期症状は一般の風邪と似ており、症状からだけで見分けることは難しい場合が多いですが、通常の風邪とやや異なる点は以下のようです。

@    インフルエンザの症状に似ており、筋肉痛・頭痛をともなう場合が多く

、鼻汁を訴える人が少ない

A   特徴的な所見として、嗅覚または味覚(あるいは両者)障害を伴う頻度

が高い

B   下痢や嘔吐などの消化器症状の頻度は1020%前後で、エンテロウイ

ルスのような激しい症状は少ない 

発症から1週間程度で回復する人が多いが、約15%の人で、呼吸状態が悪化し酸素投与が必要となります。

 感染経路

ウイルスの感染経路としては、飛沫感染と接触感染があり、どのウイルスでも共通です。新型コロナウイルス感染症では、飛沫感染が主体で、接触感染もありうるとされています。密閉された空間において、空中を浮遊しているウイルスを吸い込むことによる「エアロゾル感染」の可能性も報告されていますが、まだ医学的には「エアロゾル感染」の定義はなく、現段階では医療機関において、エアロゾルが発生するような検査・処置(肺機能検査、気管支鏡、人工呼吸器の装着など)を施行する場合に対策を講じる必要があるとされています。「エアロゾル感染」は飛沫感染のひとつとも考えられますので、いずれにせよ一般の生活においても「こまめな換気」が必要です

(最近 変異株において、このエアゾル感染が考えられる例も報告されています)

 予防

現在、新型コロナウイルス感染に対して行われている以下の予防対策そのものが、一般の風邪の予防対策です。

@    手洗い

A    外出時のマスク着用

B    家の中でも咳エチケットを心がける

C    換気を十分におこなう

D    人と人との距離をとる(社会的距離)

実際、新型コロナウイルスが蔓延して、多くの人が予防対策をした、2020年から2021年にかえての冬には、インフルエンザはほとんど流行しませんでした。

 対処法

夏かぜは下痢を起こすことも多く、下痢を起こすと脱水症状にもなりやすいので、水分を多めに摂ることが必要です。とくに高齢の方は、のどが乾いていることに気づきにくく、脱水症状になりやすいので、意識して定期的(1時間に1回程度)に水分補給を行います。おかゆや野菜スープなど胃腸にやさしく、ノドの通りの良いものを摂るようにします。

また、高熱が2〜3日続くこともよくありますが、厚着や、ふとんをかぶって寝たりすると、熱がこもってさらに脱水がすすんでしまいます。無理に汗をかいて治そうとする行為は逆効果です。

人間の体は、ウイルスが体に侵入した時、自分がもっている免疫により、発症を抑え、発症しても自然に治癒することができます。

一方で、炎天下での運動や外出、あるいは睡眠不足や不規則な食事は、免疫力の低下をおこします。

十分な睡眠、バランスのとれた食事、規則正しい生活がなにより重要です

免疫力を高める食べ物としては、ショウガやニンニクを使った料理や、チーズやヨーグルトなど乳製品に含まれるたんぱく質には、免疫を活性化する成分が多く含まれています。

 

 

 

 


2021年7月1日(木)

 現在の発熱診療について
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7月20日から始めた発熱外来(発熱診療)は スタッフの協力のもと、外来時間および患者動線を分けたトリアージを行いながら現在も継続しています。神奈川県の中で、相模原市は横浜、川崎に比べまだ陽性者は少ない状態ですが、それでも医師会が報告している陽性患者数は日増しに増加しているのが現状です。また最近では、仕事場で陽性者がでた場合、濃厚接触者以外の方(無症状)の自費のPCR検査依頼も増加しています。最近、検査会社が運営する格安の自費PCR検査が登場し、陰性の確認を求めて受診される方が増加しているとの報道があります。検査が安く、簡単に施行できることはもちろん大変に喜ばしいことですが、検査会社が運営するPCRセンターには医師がいないため、
「陽性」と判定された場合でも届出の義務がありません。「陽性」の場合は提携医療機関を検査センターが知らせしているようですが、無症状の場合「陽性」を周囲に知らせたくない人は医療機関を受診する可能性はないと思われます。
 当院では、発熱等で受診されて行政検査でPCRを行った場合はもちろん、無症状の方が自費でPCRをおこなった場合も、すべて保健所に届け出ることを前提に検査をうけています。保健所では「陽性」と報告された方に対しては、その後の入院か自宅待機かの判断、濃厚接触者の有無、患者行動歴、家族環境などの把握等多くの仕事があり、患者数が増えれば増えるほと業務量も増加しています。そのため、保健所の負担をできるだけ軽減するため、当院では発熱患者さんには陽性であった場合を想定して、全員にヒアリングシートや家族・仕事環境などを問診あるいは記入していただいています。

2020年12月10日(木)

 雑誌報道におけるPCR検査の目的について
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8月・9月号の「週刊現代」「女性セブン」に「PCR検査ができる医療機関」として当院も取り上げられていますが、当院は両者の出版社からは、一度も事前に掲載承諾の連絡を受けておりません。
8月16日のコラムでも述べたように、当院でPCR検査を開始した目的
@重症な呼吸器疾患や心臓疾患のある患者さんが多く来院されていること
A保健所あるいは医師会を経由するPCR検査を受けられるまでるまでの時間が延びていることB各病院あるいは診療所の特性から感染対策ができない、または感染症の疑いのある患者さんを診察できない医療機関(透析の医療機関や産科等)から、当院を受診される患者さんが増加していること、が本来の理由です
 重症患者の臨床データーは着実に蓄積されている一方で、その初期像はまだ十分解っていないのが実情であり、診療所のように発症数日で来院する患者さんにおいては、何をもって新型コロナウイルス感染を疑うのかは不明な点も多くあります。残念ながら、新型コロナウイルス感染症は有効なワクチン、有効な治療薬が出るまでは、感染者が0になることはあり得えず、死亡者をどれだけ減らすかを第一に考えることが必要な段階です。
 私も開業前大学病院で、約23年間胸部外科医として診療にあたってきましたが、呼吸器および循環器の重症患者においては、医師のみならず、看護師・検査技師など医療従事者には、新型コロナウイルスでなくても大変な負荷がかかります。「早期に診断して、重症化する前の患者さんをスムーズに専門医療機関にわたす」ためには保健所および病院において十分な余力がある状態が必要であり、医療機関側が「切迫してきている」と感じてきた段階では既に現場は回らない状態になっています。
 最も早期に患者さんに接する診療所は、感染対策をとりながら、必要と思われる人にはすみやかに外来での診断ができる体制が必要であり、少なくとも病院に紹介する際は、紹介患者が「コロナウイルス感染症であるか、ないか」を診断できているだけでも、病院側の負担は大幅に軽減されるものと考えられます。診療所は常に専門病院に対するゲートキーパー(門番)としての役目があります。
 7月17日に、「無症状の方の唾液PCR検査」も認められたことから、全国で、この無症状の方に対する自費診療としてのPCR検査をする医療機関は増加していますが、「発熱外来」を設けて病院や診療所で保険診療としてPCR検査を実施している施設はまだごくわずかですその理由として
@発熱外来を行う場合には、医療従事者が完全な感染防御が必要
A一般の患者さんとの接触を防ぐため、動線や診察室、外来時間をわける必要がある
B発熱外来を行うことは、医師のみならず、看護師・医療事務など診療所のスタッフ全員がそれなりのリスクをかかえることになる
CPCRを保険診療で行うためには事前に各自治体と契約を交わす必要があること、などがあげられます。
 今回の雑誌にとりあげられているのは、無症状の方が、いわゆる「陰性証明書」を希望されて来院される場合です。当院が保険診療とは別に、自費診療としてPCRを同時に開始したのは、あくまで、仕事での移動やお店の継続等の経済活動を円滑にするため、少しでも不安材料を軽減することの社会的な目的であり、呼吸器疾患を専門とするクリニックの本来の目的ではありません。
 「PCR検査を可能な限り増加させるべき」とする一部の報道において、
無症状者に対してやみくもにPCR検査を増やせば、保健所などがその濃厚接触者の追跡におわれる業務がさらに増加することで、本当に必要な人に対するPCRがさらに遅れることになります。新型コロナウイルスは感染しやすい感染症である一方で、現在まで死者は1154人(8月20日現在)で、昨年の季節性インフルエンザの死者3571人を大きく下回っており、PCR陽性者の9割以上が無症状あるいは軽症である現在、公費の使い道は、重症患者をみる病院および経済活動を回すためのお金として重点的に使うべきと考えています。

2020年8月23日(日)

 唾液PCR検査および新型コロナウイルスにおける検査について
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発熱外来において、従来は保健所あるいは医師会が行っているPCR検査を依頼していましたが、現在神奈川県における感染者の急増にともないPCR検査は、依頼してから5-7日間の待ち時間が生じています。当院では呼吸器や循環器疾患を有している方が大勢おられ、感染すると重症化する可能性のあるため、早期に診断することが必要となっています。そのため7月20日より院内で唾液PCR検査を施行しています。鼻の奥から綿棒で粘液を採取する従来のPCR検査は、検査後におきる「くしゃみ、咳」のため医療従事者がしぶきをあびることから、防御服、N95マスクなどの厳重な感染対策が必要であり、また検査後に生じるエアロゾルを予防するには、完全隔離された部屋、陰圧室、あるいは屋外での検査が必要なため診療所で施行するには高いハードルがありました。

62日 厚生労働省は新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査において、国立感染症研究所の「鼻の奥の粘液を使ったPCR検査で陽性となった感染者の8593%で、唾液でも陽性と判断された」との研究結果をもとに、発熱などの症状が出てから、9日目までは唾液を使うことを可能とする通知を出しました。

唾液検査では、飛沫やエアロゾルにともなう医療従事者や一般外来患者に対する感染リスクがなく、直接患者さん自身が専用容器に出した唾液を、サージカルマスク、手袋のみをした看護師が3重梱包して検査会社に提出するだけなので、診療所においても十分可能です。3週間おこなった発熱外来での検査では、幸いなことに現在まで陽性者はみられず、現在のところ相模原市において市中感染はそれほど蔓延している印象はありません。また7月17日には無症状者における唾液PCR検査も認められたことから、仕事等の理由から「陰性証明」が必要な方たちからのお問い合わせが増加しています。(無症状の場合はすべて自費検査)

新型コロナウイルス感染症においては、PCR検査、抗原検査、抗体検査の主に3つの検査があります。それぞれに特徴があり、現在の適応および特徴を表にまとめました(「コロナウイルス検査方法の比較」参照)。

唾液PCR検査は、検体を検査会社に提出した翌日の夜間に結果が送られてくるため、早くても結果判定までには2日を要しています。最も早いのは抗原検査における簡易キットでの検査です。これは、インフルエンザ検査で行われている検査とほぼ同じ方法であり、外来での簡易キットにより約30分程で結果がでますが、欠点として、@検査精度がPCR程よくない A唾液での検査は未だ認められていない(現在研究段階)ことがあげられます。そのため現時点では当院では採用していません。今後唾液による抗原検査簡易キットが発売されれば、外来で早期に診断が可能になるかもしれません。少し特殊ですが、SATIC法と言われるPCR法とは異なる核酸増幅法を用いた迅速検査法も開発がすすんでいます。これは唾液検体と試薬を混ぜて25分程度で検査結果が判定可能で、しかもPCRとほぼ同等の精度がある検査とされており、今後の推移に期待が持たれています。

検査を受ける方、または受けた方に最も注意していただきたいのは、どのPCR検査においても、その感度は約70%です。検査で陰性と判定されても、その後「陽性」と判定される可能性は常にある、ということはくれぐれもご承知おきください。




2020年8月16日(日)

 PCR検査について
投稿:
東京・神奈川での新型コロナウイルス感染症が増加しています
従来PCR検査は、原則として保健所をとおしての依頼でしたが、まだ検査態勢は十分ではありません。呼吸器疾患をあつかっている当院では、発熱の患者さんも拒否せずにうけいれる体制をとっており、そのため、可能な限りの感染対策をとっております。(発熱の患者さんは、診察室および導線・時間をわけて対応をとっています。)
そのため、今後新型コロナウイルス感染が疑われる患者さんにとって、できるだけ迅速な診断が必要となっています。従来から報告されてきた唾液によるPCR検査は、患者さんにとっても医療従事者にとっても負担が少ない検査方法ですが、通常のPCR検査と比べてその精度が検討されていました。最近、発症9日までは、咽頭鼻腔からのぬぐい液と唾液検査の結果がほぼ一致することがわかり、保険適応がなされています。現在相模原市では、医師会、および自治体で今後の検討がされていると聞いていますが、呼吸器・循環器を中心として診療している当院では、先駆けて唾液検査を施行するため、すでに検査会社から採取するための容器をとりそろえ、スタッフもその採取手順も取得しており、まもなく開始予定です。健康保険が適応となるためには、相模原市との契約が必要ですが、すでに書類は提出済みですので、契約が成立しだい検査を開始いたします。症状がある方に取っては保険診療が可能です。
ただし、検査は発症後9日以内に行う必要があり、また新型コロナウイルス感染症が疑われた場合にはじめて行うことができる検査のため、施行する、しないはすべて医師の判断によることをご了承ください。(保険診療でおこなった場合は陰性、陽性を含めてすべて相模原市にその結果と経緯を届け出る必要があります)
症状がない方、および陰性証明書が必要な場合等はすべて自費になります。
また唾液PCR検査にあわせて、従来施行してこなかった抗体検査も、精度の上昇および、複数の抗体検査をあわせることにより疾患に対しての防御可能な免疫ができていることが報告されたことを踏まえて、抗体検査(すべて自費)も開始予定です。抗体検査はあくまで過去に感染したかどうかを判定するものですから、過去に何らかの新型コロナウイルス感染を疑う症状があった場合、および 発症後10日以上経過した場合に行われる検査です。
詳しくはホームページ上で随時お知らせいたします

2020年7月19日(日)

 見えるものと見えないもの
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 現在は外来で呼吸器・循環器の内科をしていますが、大学時代は胸部外科医として毎日手術をしてきました。若い頃は、癌の患者さんに対しては、癌を根こそぎ取る事だけを考えていましたが、外科医となって15年くらいしたある日、肺癌の手術が終わって退院したお婆ちゃんから「おかげさまで大好きな花の世話ができるようになりました」と言われました。その時「自分がしている手術の目的は、癌を取り除くことではなく、癌を切除することでその人がもっていた正常な組織の機能を守ってあげること」なのだということに始めて気づきました。それ以来、今まで当たり前にしてきた手術は、「癌をみて取る手術から、癌の陰にかくれている正常な組織を見つけて、癌から切り離してあげる手術」に変わりました。
 現在の手術は、内視鏡やロボット支援手術などの進歩により、患者さんにとって侵襲の少ない「低侵襲手術」になっていますが、「低侵襲」という言葉は、「患者さんが生まれた時に与えられた正常な組織をできるだけ大切に守ってあげる」というのが本来の概念です。癌だけを見るのではなく、癌の陰にかくれている正常な組織が見えるようになって、はじめて一人前の外科医に育つのだと思っています。
 水墨画においては、絵師は、描いている対象物のみを意識することなく、常に周囲の「余白」を意識しながら描いており、それによって単に紙の余白にすぎなかった部分が、完成時には「永遠を感じる空間」となっています。
 今年は、禅についての著作を英語で著し、日本の禅文化を世界に広くしらしめた鈴木大拙氏の生誕150年にあたります。鈴木大拙氏はアメリカから帰朝し、初めに東京大学印度哲学研究室で仏教の話をした時、机の上においてある花瓶を指さして、「この花瓶をはじめから「花瓶」と見てしまうと、それ以上のものは生まれません。「花瓶を花瓶とみて、花瓶とみない」見方が必要なのです」と話されたそうです。
 なんだか禅問答の世界にはいったようで難しい話ですが、要するに花瓶をはじめから花瓶だと決めつけたら、この入れ物は花瓶でしかありませんが、見方をかえれば、器にして水を飲む事もできるし、寝たきりの人の尿瓶(しびん)にもなるかもしれません。
 この講義を聞いた仏教学者である紀野一義氏は「花を見て花と見ず」という言葉で表しています。
 紀野氏によれば、美しい花を見た時、人は「きれいな花ですね」と言いながら、実はそばにいる人の反応をみている。自分が「美しい花」である事がわかる人間である、ということを周囲の人がわかるように話している。しかし、本当に花の美しさに感動する人は、自ら肥料をやり、虫をとり、風雨から花を守る努力を続けて、しかもそれを苦労とは思わず、むしろ楽しみに感じながら花を育てている。そのような人だけが、花が咲いた時に真に花の美しさに感動して「美しい」と言っている。
(禅 現代に生きるもの NHKブックス)
 目に見えているものだけにとらわれると、本当はその後ろにあるもっと大切な物を見失っているかもしれません。 金子みすずの詩 があります

星とたんぽぽ
青いお空のそこふかく
海の小石のそのように
夜がくるまでしずんでる
昼のお星はめにみえぬ
見えぬけれどもあるんだよ
見えぬものでもあるんだよ
ちってすがれたたんぽぽの
かわらのすきに だアまって
春のくるまでかくれてる
つよいその根はめにみえぬ
見えぬけれどもあるんだよ
見えぬものでもあるんだよ


2020年6月28日(日)

 ペイルブルードット
投稿:

アメリカの宇宙学者カール・セーガンの宇宙カレンダーによれば、150 億年前、現在の宇宙がビックバンによって始まった時刻を1 月1 日の午前0 とし、今現在を12 月31 日の午後12 とすると、地球が誕生したのは10 月20、生命が誕生したのは12 月14 、人類の祖先が生まれたのが12 月31 日午後9 、そして現代文明は12 月31 日の午後1159 を過ぎてからだそうです。 

人間の一生を仮に100 年としても宇宙の時間からみればたった0.2秒です。そのうち半分は寝たり食事をしたりしていますから0.1秒、またその半分くらいの時間は雑談をしたりボーッとしたりしていますから、実際に人間が一生の間で何かをなしえる時間は、宇宙からみれば0.05秒にも満たない時間になります。

このようなほんの一瞬の出来事にすぎない時間の中で、人間は多くの人と交わり、笑い、泣き、悩み、喜び合いながら生きています。今の自分がこうして生きていられるのも、自分を産んでくれた2人の両親がいたからであり、その両親がこの世に生を受けたのも、さらに4人の両親がいたからであることを考えると、今ある自分の生は無数の人達がいたおかげである事に気づきます。

0] は無限大あっても0ですが、0以外の正の数は、たとえどんな小さな数でも、合わされば無限大になります。何もしないところからは、何も生まれませんが、一人一人がわずかでも前に進む努力をすれば、最後は大きな前進になります。

どんなにあがいても一人の人間ができる事は極わずかです。ほんの一瞬の人生の中で、自分が少しでも前に進むことができれば、その思いは次の世代に引き継がれていきます。

 1977 年に打ち上げられた木星探査用ロケットボイジャー1は、太陽系の写真を数多く地球に送り続けた後、最後に振り返って撮影した写真の1枚には、60 億kmのかなたに地球が1点の光として写っています。ボイジャーが、それまでに送り続けてきた太陽系の貴重な写真の中において、1点の光しか写っていないこの最後の写真は、科学的にはほとんど価値のないものですが、地球があらためて太陽系の一員であることをしめす最も有名な写真として「ペイルブルードット(Pale Blue Dot」と呼ばれています。この写真を最後にボイジャー1号はその任務を終えて、宇宙の闇の中に消えていきました。

新型コロナウイルスが世界中に蔓延している中にあっても、人類はいまだ宇宙からみれば、このわずかな1 点の光の中で多くの争いを続けています。

死ぬ最後の瞬間を迎えて、自分の人生を振り返った時、自分が歩んできた過去の軌跡が1点でも輝いて見える、そんな人生を送りたいと願わずにはいられません。


Pale Blue Dot】

ボイジャーが最後に振り返って撮った写真:中央の1点の光が地球

Pale Blue Dot:ボイジャーが最後に振り返って撮った写真:中央の1点の光が地球           NASA  Jet Propulsion Laboratory より


2020年6月18日(木)

 息苦しいと思ったら
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不安感のためか、「過換気症候群」の患者さんが最近増加しています。

過呼吸になると、血液中の炭酸ガスが低くなりすぎ、そのため呼吸をつかさどる神経(中枢神経)により呼吸は抑制され、患者さんは呼吸困難を感じます。頻呼吸のため、血液がアルカリ性に傾くことで血管が収縮し、手足のしびれや筋肉のけいれんもみられるようになります。 このような患者さんの多くは、「息が吸えない」と訴えて来院されます。

 人間はたえず呼吸をしていますが、無意識に呼吸をしていても必ず肺の中には空気が残っています。通常の呼吸をしながら、息を吐いた状態でも、その後にもさらに息を吐き出すことができますが、これを医学的には「予備呼気量」と呼んでいます。予備呼気量の空気を吐き出しても、肺はペチャンコにつぶれることはありません。最大限に吐き出しても、さらに肺の中に残っている空気が「残気量」です。

主にタバコを吸うことによって発症するCOPD (慢性閉塞性肺疾患)の患者さんは、この残気量が増えることによって肺が過膨張となり、その結果新しい空気を吸い込むことができなくなっています。

 健常な肺の人でも、息を「半分だけ吐いた状態で、次の息を吸う」といった呼吸を数回くりかえすと息苦しくなりますが、COPD の患者さんが感じている息苦しさは、まさにこの状態です。COPD は息が吸えない病気ではなく、息を吐けない病気です。

「息が吸えない」と言ってくる患者さんに対して、「息を吸えないと思ったら、まず息を吐き出すことを意識してください。ゆっくりと、できるかぎり息を吐き出せば、その後は十分に息を吸うことができますよ」と説明しています。

 人間の一生は「息を吐くことから始まって、息を吸うことで終わります」

その証拠に、赤ちゃんが生まれた時は「産声をあげる」といいますが、その時は息を吐き出しています。

 亡くなる時は「息をひきとりました」と言われますが、すなわち息を吸って、その一生を終わります。

生きている間は、「息を吸うことより、息を吐くこと」のほうが重要なのです。

新型コロナウイルスのおかげで、多くの人にとって、今まで無意識に行っていた呼吸を、意識する時間が増えたと思います。「息を十分に吐き出して、新鮮な空気を思い切り吸い込むことができる生活」に一日でも早く戻りたいものです。


2020年6月14日(日)

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